〔前文〕

このインタビューは2006年7月15日、北海道市場のセレクションセールが開かれる直前におこなわれたものである。当時、筆者はコンサイナーをテーマとしたグリーンチャンネルの番組取材(「Odds On TV! 〜馬組の人〜」シリーズ 第5、6回「セリを演出する」)のために4月末からセレクションセールが終わる7月18日まで、何度となくエバグリーンセールスコンサインメントの本拠地である藤沢牧場真歌分場へ通っており、このインタビューもTV取材の一環として行われた。
したがって、こうしてネット上でそのインタビューの全容を公開するのは藤沢澄雄氏はもちろん、グリーンチャンネル関係者の理解を得た上で初めて可能になったことであり、そのことを最初にお断りしておくとともに、ご理解いただいた方々への感謝の意を表明しておきたい。

インタビューは当初の予定ではエバグリーンセールスコンサインメントの代表である藤沢さんに2ヶ月に及ぶセリ馴致の過程を振り返ってコメントを頂きたかったのと、数日後に迫ったセリへの期待を語っていただければそれで充分だった。しかし、実際にインタビューを始めると話は多岐にわたり時間にして1時間に及んだ。番組で使うのはせいぜい4〜5分でしかないのに、これはもったいない。何度か聞き返していくうちに、どこかでインタビューの全体を発表したいと思うようになった、それだけ内容も充実している。話の内容はコンサイナーという仕事の説明に始まり、馬を売るために今何が必要か、競馬のシステムが抱える構造的な問題、馴致の現場が抱える悩み、馬を扱う基本姿勢、まで多岐にわたっている。

コンサイナーという仕事は生産者と馬を買う購買者の結節点にある。生産者の状況も購買者の状況もわかる、そういう場所に立って「今、何が必要か」を語る藤沢さんの言葉には経験に裏付けられた説得力がある。もちろん藤沢さん自身が生産者でもあり、比重が生産者の方に多くかかっているという点で、必ずしも競馬全体を客観的に公平に見ているかといえばそうではないだろう。しかし生産者から委託を受けた馬をどうやって売ろうかという意識はそのまま、今の競馬界がかかえる様々な矛盾や問題に直接ぶつかっていかざるをえない、そのことがこのインタビューを通して読んでもらえれば理解できると思う。

年々減り続ける生産頭数、今年こそわずかに回復のきざしをみせたもののまだまだ予断を許さないセリ市場の先行きなど、つき詰めていくと厩舎制度や馬主資格の問題、衰退する地方競馬の現状など競馬が抱える問題のしわよせがすべて馬産地を直撃しているように見える。競馬という大きなシステムの中で最も弱いところに最も大きな影響を与えているのである。そういう状況の中で、今馬産地が何を考えているか、藤沢さんの答えだけがすべてとは言わないが、この10月にコンサイナー連絡協議会なるものが発足し、その会長に就任したという事実が意味するところは大きい。ここ数年セリで圧倒的な実績を上げてきたコンサイナーが本気でスクラムを組めば、無視できないムーヴメントが巻き起こる可能性もある。そういう意味でも注目していただければ幸いである。

                                      2006年12月

                                            (取材・構成 Flying Stuff 高木耕二)



 
プロフィール

藤沢澄雄氏 昭和31年生(50歳)
エバグリーンセールスコンサインメント代表
(有)藤沢牧場専務取締役 北海道議会議員

97年 ヨーロッパ研修をへて1歳馬のセリ馴致を本格的に始める。
01年 藤沢牧場真歌分場を本拠に「エバグリーンセールスコンサインメント」を立ち上げ、
    コンサイナー事業を開始。
04年 後にGI馬となるロジック号をコンサイニング。
    (HBAセレクションセールで30,975,000円、前田幸治氏落札)
06年 10月に新たに発足したコンサイナー連絡協議会の会長に就任。
●コンサイナーという仕事
コンサイナーとは
 


 
(馬は1歳になると人の手によって本格的に教育され、心身ともに日々競走馬らしくなっていく)
── コンサイナーって何です?まず、そこからお聞きしたいんですが。
藤沢 セリに出すために馬にある程度躾を教えて、セリ会場に行って、っていうのが第一ですよね。その次はいかに付加価値をつけて高く売るかということをプラスアルファで僕たちはやるし、欧米だとそれを全部ひっくるめて、ひとつのコンサイナー業として、とにかく預けたらあとは何も生産者はしなくていいよと、馬主はしなくていいよという形になるんでしょうけども、僕らはまだ、ちょっとそこまでは行ってない、手前の段階ですね。スタート段階は、僕らが手間を引き受けますよと、僕らが行儀、しつけを教えますよと、それだけだったんですね。だけど徐々に認められ出して、今は付加価値つけるよというレベルにまで達していますね。
── 付加価値というのは具体的に言うとどんなことですか?
藤沢 そうですね、これよく勘違いされるんですけれども、やっぱり100持ってる能力を120にはできないし、嘘はつけませんから、少なくとも数いる馬の中で、お客さんの目を引くことをどうやったら出来るんだろうとか、本来100の潜在能力持ってて、何もしないと80にしか見えないかもしれない、それを100に近づけるということですね。具体的な話で言えば初期の段階は、やはりちゃんと磨いて毛づやをよくすることですよね。それからちゃんと歩くことですよ。歩くのもかっこよく、やっぱり力のある踏み込みのいい歩き方をさせる。あとは、まあ、いろいろ。耳をきれいにしたり、ひげを剃ったり、たてがみを揃えたりっていうのは、まあ第一印象の良さだと思うんですね。
── そのあたりが付加価値ということですか?
藤沢 だと思ってます。
コンサイナーを始めた経緯
(野平祐二さんの教え)
── コンサイナーのお仕事を初めて何年ですか?
藤沢 そうですね、(エバグリーンセールスコンサインメントを)完全にたちあげて。丸5年ですか、6年目に入りましたね。
── 始めようと思い立った経緯はどんなだったんですか?
藤沢 そもそもはお世話になっていた野平祐二さんが、たまたまセリの準備を始めたところを見てくれて、いろいろ指導してくれたんですね。今思うと、ヨーロッパスタイルのセリの形を知ってて、こういう風に歩きなさいとか言われて、それを見よう見まねでやっていたんです。それをある時、今度は担当者を決めて、ひとりづつこの子はこの馬だよと、1ヶ月かけて準備したんですね。それを終わってセリに行って売れたときに、その担当した子がすごく喜んでくれたっていうか、達成感て言うんですかね、あの姿を見たときにね、あ、けっこう牧場に働く子にとってもすごくいいものを与えられるなあっていう気がしたんです。それですごく興味を持つようになりました。
(ビデオで研究)
藤沢 そういうことがあって、アメリカのセリ馴致のためのビデオを買いまして、それをほとんど穴があくほど見て、これも見よう見まねでやりました。そんなことをずっとやって、そのうちハミを使ってみようとか、でもハミ最初に使った時には気の狂った馬持って来てどうするんだみたいに他の牧場仲間から言われたこともありましたよ、でも今じゃハミは当たり前になりました。そんなんでとにかく誰かやってるじゃなくて、見よう見まねで何かやれることをやってみようということで、マニュキアなんかもね、最初は馬のマニュキアなんて売ってるの知らなかったんですよ。で、蹄油だとすぐ汚れちゃうんでね、何かいい方法ないかなと思って、自分では単純に人用のマニュキア塗ってみようと、そしたら外国行ったら馬用を売ってるよっていうことで、後から知ったんですけどね。だから、なにかこう自分なりにいろんな事に挑戦して、編み出していくことが面白かったですよね。今でもそれは続いています
(海外研修)
── で、そういうことを始めてから海外に行かれたわけですよね?
藤沢 はい。ドバイの研修制度で、期間は、ま、私自身がたまたまもらえた休みが3ヶ月だったんですね。女房がタダなら行ってもいいよと言ってくれたんで・・・()
これがね、その3ヶ月というのは自分にとっては1年に相当するくらい中身があったなと思ってますね。とにかく、エサのことから運動の時間、それから歩き方ですね、自分でやり始めてわからなかった疑問ていっぱい持ってましたから。当時、行って習うというか自分でやることによって、すぐ、明日から役に立つんですよね、だからもう楽しくてしょうがなかったですね。
もちろん自分よりずっと年の若い二十歳くらいの若い人たちと一緒にやるし、精神的にはつらい部分もないとは言えないけれど、でも楽しかったですね。
で、帰ってきてからは、まず同じ事をやってみようと、それでもね、今でも、あれっ、これどうだったかなと、もう一回行ってみたいなとか思うのと、また新たにそれだけが見本じゃなくて、自分なりの、ここだけの技術を編み出していこうってのもありますけどね。
── それは何年前ですか?
藤沢 私が厄年の年でしたから9年前(97年)ですね。そんなになるのかな。思い切ったことやりたいというか、自分にとって転機でしたね。
(エバグリーンセールスコンサインメントを立ち上げる)
── で、エバグリーンセールスコンサインメントという形で正式に始めたのが6年前になるんですね?
藤沢 そうですね、6シーズン目になるんですね。
その頃にですね、軽種馬農協もセリ場において馴致も少しちゃんとしようということで、いろいろ気運が盛り上がってきたんです。ちゃんとした服装にして、革頭絡つけて、ハミもそろそろみんなに教えてもいいんじゃないかっていう話になって、ちょっとお前教えてくれないかということでセリ前に3回くらい講習会やらせてもらったんです。で、その話の流れでビデオ作るかということで協力させてもらったりしてですね、そんなんで僕自身も逆にもっと勉強したい、もっとレベルアップしたいって気持ちになりましたね。それからですね、もう大々的にプロモーションしてやりだしたんです。
── じゃあ国内では完全に先駆けだったわけですね?
藤沢 そうですね。ま、正確には第1号は高昭牧場さんでしたけど、あ、僕も負けてられないな、急いでやりたいなっていうんで、最初のプロモーションはかなりお金かけました。もう、全戸に立派なパンフレット配って、というのは意識として自分たちも出来る技術をお金払ってまでやる価値あるのかということだったものですから、やっぱり、いきなりグレードの高いもの持って行かなきゃダメだと思ったんですね。
でも1年目はもう全然、手が足りない人たちが、ま、しょうがないから頼むか、と。今までもとなりの兄ちゃん頼んでお金払ってたから、その分少し期間長いけど試しにやってみるかという程度でしたよ。
それが2年目ぐらいから、もう、見事に変わってきました。それは1年間いろんなセリがあって、僕ら自身も試行錯誤しましたし、それは見る見るうちに預けてくれたお客さんの反応が変わってきたし、発想も変わってきましたね。今、長靴はいてくる人もいなくなったし、ハミするのは当たり前になりましたしね、たまに他の地区から来る人で、なんかタイムマシンに乗ったようなね、ホントにね、カルチャーショック受ける人いますよ(笑)。
セリって、こんな風になっちゃったんだっていう・・・
コンサイナーの現状
── 今、コンサイナーを業務としてかかげてる牧場はいくつくらいあるんですか?
藤沢 登録業者っていうと、もう100軒くらいあるんですよ。
── あ、そんなにあるんですか?
藤沢 補助金の関係があって。ただ、僕らがいつも見てて明らかによその馬を広く受け入れてやってるというのは、まあ10社前後だろうと思いますね。あ、ここはちゃんとしてるなっていう所はやっぱり限られてきますね。
── コンサイナーに対する需要は増えていますか?
藤沢 間違いなく増えています。それで受け皿の方が必ずしも増えていない、正直、ちゃんとやってる所はどんどんレベルアップしてますし、じゃあ他の人たちがすぐそれだけになるかというと、そんなには簡単ではないと思うんですね。もちろん個々の技術というのは、すごいということもないんですよ、あの、その気になって一生懸命時間かけてやれば出来ることなんですが、なかなか皆さん、そこまで手間ひまかけるだけの意識を持たれてない人もいるなあと思ってます。
── レベルアップしているところはセリでも実績があがっている?
藤沢 そうですね。預けてくれるお客さん自身が選ぶようになりましたよねえ。だから、ぼくらも、ほんとに反省がいっぱいですよ、それは。
── もうひとつ伺いたいのは、コンサイナーには、いわゆる販売の委託という仕事もありますよね。そちらの現状は?
藤沢 そうですね。これが僕らの仕事のこれからの本当の課題だと思ってるんですが、今やれることはいかに事前に、広く多くの人たちに自分たちが管理している馬をご紹介するかって言うことなんですね。このへんがまだまだ対策の余地があると思ってますね。ただ、やってみて思ったのはまとまって繋養しているということで、事前にお客さんが牧場で見てくれるようになったんですね。これは最初に想定していなかったんですが、これがすごく効果的だということがわかりましたね。もうセリ前の早い時期から見せてくれとか、そういうお客さんもいますし、だから、これは各牧場で一頭ずつ馬がいるよりは、明らかに事前に見てもらえるチャンスが増えるって事ですよね。
あとはね、本当の販売の時に、やっぱり価格交渉みたいなのがない訳じゃない。セリとはいえ、だいたいの値踏みもあったりしますから、こういう時に今度は僕らが生産者と馬主の間に入って、お互いが納得できる値段で売買するという、そのためのアドバイスも私たちしたいなあと思っています。
それと、そうですね、この馬にあったセリはどのセリかっていうことを選定する、あるいはお台価格を決める、そのためのアドヴァイスをどれだけ出来るかって言うこともありますよね。やることいっぱいあります。
── そのへんはまだ手が着いてない?
藤沢 そうですね、まだまだこれからだと思ってます。
── 今回、セレクションセールのためにパンフレットを作られましたよね?
藤沢 はい、今年は新たな試みで、コンサイナーをやっている5軒の牧場が集まってまとめて冊子を作ろうと、あと今年はインターネットで動画の配信も、試行錯誤の途中ですけどやってますね。
── どうですか宣伝の効果は出ていますか?
藤沢 なかなかこれやってこれだけの費用かけて、これだけ効果が出たって、はかるのはむずかしいですよね。数字としてはちょっとまだわからないですね。
── 契約上は委託契約になっているんですか、販売は?
藤沢 はい、そうです。うちの場合はいわゆる1日いくらという預託料金と、プラス成功報酬で売れたときに3%いただきますよということになっています。
── とりあえずここまでやってきてエバグリーンセールスコンサインメントという組織、仕事の完成度をどうみてます?
藤沢

う〜ん()・・・完成度ねえ。
ある程度はですね、期間内に馬を仕上げるという部分に関してはまあまあ、そこそこのレベルには達したかなとは思ってます。ただ、あとはですね、もう馬ってほんとうにいろんな馬がいますから、そのつど勉強なんですね僕らも。だから本当にこれは「これでいい」なんて事はないと思ってます。ただシステム的に、ある程度流れはできたかなと思ってます。

注1)補助金の関係
JBBAが「せり市場上場馬馴致促進事業」として生産者に出している補助金。各地の軽種馬農協が主催する1歳馬のセリに向けて生産者がセリ馴致業者(コンサイナー)に馬を預託すると、その預託期間に応じた補助金が支払われる。この場合預託先の「セリ馴致業者」もJBBAの登録を受けていなければならず、その登録を受けた業者は100軒を超えている、と言う意味。
注2)宣伝効果
セレクションセール終了後に改めて藤沢さんに話を伺ったところ、「インターネットで動画を見た」「パンフレットで写真を見た」という客が相当数市場の厩舎を訪れ、実馬を見てセリに臨んだという。数字はともかく肌で感じた効果はかなり大きかったようだ。来年以降、このプロモーションは強化されていくものと思われる。ちなみに主催者である北海道市場が事前に購買登録者に配布する上場馬カタログには馬の写真がついていない。北海道市場では写真は不要と考えているわけではなく、販売申込者に写真の提出を呼びかけているが提出する者が少ないという現状がある。本来主催者側がカメラマンに依頼して撮影すべきという意見も当然あるが、これには予算の問題もありそうだ。

●コンサイナーの課題

セリの改革

  ── あと、これからの課題というと何でしょう。
藤沢 そうですね、いや、少なくとも来年くらいは我々がセリの販売申込者になって、自分たちですべてやれるという形、生産者は預けたら、もう売るまでまかせるよというスタイルに、なんとか来年度くらいからやりたいと思います。あとはプロモーションというか、事前のことかなと思ってますね。
いや、もちろんセリ会社もやりたいと思いますよ。今のセリではどうも歯がゆさというか、もっとこうやればお客さんにとっても生産者にとってもいいというようなことがあるんですね。そうすると、やっぱりセリ会社やりたいなあと思いますよね。
── コンサイナーから見た、今のセリのありようというのは、どこが問題ですか?
 
(06年のセレクションセールは総売上額は増えたが、1頭あたりの平均価格は下がっており、買い手市場に大きな変化はなかった)
藤沢 欧米のセリが確かにひとつの見本ではあります。それから見ると、まず基本的に売る馬の数とお客さんの数が全然違うんです。購買者の数が少なすぎる、だから単純に買い手市場になってしまうんです。このへんをもう少し改革していかなきゃなんない。それに馬主の人たちの意識を変える。北海道のここに来れば、馬って、こんなに安いんだということをもう少しわかってもらう。
ですから、さっき言ったプロモーションも、これは自分の発想以外に、もっとその分野のプロの人の力を借りながら、もっとやりたいなあと思いますね。やっぱりセレクトセールに比べれば値段安いですから、そしていい馬いっぱいいますしね。今年のクラシック戦線なんかは日高の馬ずいぶん勝ってますしね、そういうのがまだまだ眠っているんですよね。だから、もう少し購買者と僕らとの、うまく需給バランスのとれた市場がちゃんとあれば、本当にもっと活気が出ると思いますね。なんとかそうしたいんですけどね。
あとは、ま、これは競馬全体のことなんでしょうが、馬主がもっと馬をどんどん転がすというか、転売するというか、そういう(現役馬の)盛んなマーケットを作っていくべきだと思うんですね。そうするとこの(1歳馬の)市場も当然活気づいてくると思いますね。
流通構造の問題
── そうなると流通構造全体を見直さないといけませんね。
藤沢 そうでしょうね(笑) セリ会社もそうですし。いや、本当にやりたいんですよ。議員やってなかったら、ほんと、動こうかなと思いますけどね。それは1歳馬に限らないんですよね。トレーニングセールももちろんそうですし、現役馬のセリもそうですから。これは、それを求めている人もいるし、現役馬の値段なんてまだまだ不確実ですから、もっとオープンにしてもいいと思うんですね。オープンにすることによって流通が盛んになりますよ。こんなに価値があったんだということになります。それをやりたいですよね。
── 道営のトレーディングセールは?
藤沢 正直言って、あそこに出てくる前にずいぶん捌けてますでしょ。フレッシュとかアタックに勝った馬で能力が高い馬は、もうその前にトレードされてますから。それを公の市場でやりたいなと思うんですよね。そうすれば本当の価値っていうのは世間みんなが知ることになる。その方が馬の値段が最終的に1歳馬の方まで波及してくると思うんです。今は道営競馬に行くから、その賞金に見合った値段になっちゃいますけど、だけど能力があれば、そこから何倍にも価値が高くなって転売できるよということが皆さんわかれば、1歳の段階で良さそうなやつはもうちょっと高くなると思うんです。それに流通が盛んになれば、その可能性はあると思います。ま、変な話、どこかで仲介でもうけてる人いるから、やりたくない人もいるんですよ。それは間違いないです。昔からの習慣ですから。
── やっぱりいます、もうける人?
藤沢 います、います、ええ。僕らも正直現役馬ってわかんないです。
── 現役馬のトレードは、馬喰さんが関わってるケースが多いと聞いてます。
藤沢 いや、エージェントも本当に透明でやってる人もいるんですよ、けっこう。最近は特に増えてきましたね、成功報酬っていうか、買った金額のはっきり何%って、それ以上は一切もらわないっていう人もいますけどね。そうじゃない人もいますから・・・
── 流通の問題だけでもやることたくさんありますね?
藤沢 流通の問題ありますねえ、ええ。そのための、その一翼を担うために、まず1歳の部分でもうちょっとセリが活発化するように、馬主の人たちがもっと気軽に、数百万で夢のあるもの買えるよっていう形にしたいなあって思うんですね。もちろんね、安くてもいいんです。そのあとちょっと能力があればもっと高く売れるとかでもいいし、そういう形の馬の市場になってほしいなと思うんですけどね。
── なんで購買者が少ないんでしょう、馬主資格の問題ですか?
藤沢 それもあります、当然。なかなか広がっていかないですよね、馬主。現状を考えたら特に中央競馬は馬主資格のハードルをこんなに高くする必要は全くないと思いますしね。それと比較的地方競馬は取りやすいと思いますけれども、あまりに中央と地方、違いすぎますよね。それで最初の所属は地方でもいいんですよ。だけど最初の所属で変な話、馬の値段決まっちゃうんですね。これはやっぱり非常に馬にとっては自由な土俵じゃないですよね。だからこれを変えないと、どこに所属しようと能力のある馬はどこでも競馬できるよと、もうちょっとそうなればと。馬主さんだってそうですよね、地方競馬で馬主になってて、200万で買った馬が賞金の高いレースに出られるんだったら、そのまま持っていたっていいんですもんね。預託料の安い地方においておけばいい。ですからそのへんがうまくいってないですね。
いや、どこが悪いって言い出したらきりないですけど(笑)。厩舎制度も悪いし、ま、いろいろあります。
注3)トレーディングセール
正しくは「ホッカイドウ競馬トレーディングセール&レース」といい、ホッカイドウ競馬トレーディングセール&レース推進協議会(日高軽種馬農協、北海道競馬事務所など7団体で構成)が開く現役競走馬のセリ。平成13年から行われている。上場される現役競走馬によるレースを施行、その終了後にセリを行なうという取引形態で始まったが、今年(10/27門別競馬場)はレースは行われずパドックでの展示とセリという形で行われ、42頭が上場、20頭が売却された。
注4)馬主資格の問題
中央競馬の場合馬主資格を得るための要件として年間所得1800万円以上、資産9000万円以上(共に2年以上続いていることが必要)という規制があり、馬主の新規参入のハードルが高い。また地方競馬の場合は馬主資格を取得するために必要な年間所得は500万円以上となっているが賞金が安すぎるために新規参入は少ない。ちなみに中央競馬の馬主はピーク時の92年には3070人(法人含む)いたのに対し今年1月1日現在では2381人と689人減少、地方競馬はピーク時の73年が14350人に対し今年1月31日現在6028人と共に激減している。
注5)自由な土俵じゃない
同じ国に生まれたサラブレッドが所属する主催者、厩舎の違いによって出走するレースが自由に選べないことが基本的な問題。地方と中央に壁があること自体が競走馬の平等、公平な評価を奪っている。また、地方競馬相互間でも各場所属の馬主への出走手当確保=競走馬維持の観点から他場からの参戦を好まない傾向がある。こうした不自由さがなくなり出走のチャンスが増えればより多くの賞金を稼ぐ可能性も生まれ、転売もしやすくなる。転売に際して付加価値がつき高く売れる可能性が大きければ大きいほど、それを見込んで最初のセリの価格も上がるだろうし、最初の所属によって馬の将来性が阻害されることもないという考え。
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